日々、好日。

うつわや日本の手仕事、日々のことを綴っています。

ある作家さんとの出会い

今から10年ほど前のこと。

今は休刊?している「リンカラン」という雑誌で

栃木県にある益子の町の特集がくまれていました。

 

益子は関東でいちばん大きな陶芸の町として知られています。

雑誌でいろいろ紹介されているのを読むうちに

とても魅力的に感じた私は、

ふと思いたって、母を連れて車で行くことに。

 

目的のひとつは、雑誌に載っていた

陶芸家の石川若彦さんに会いたい、ということでした。

 

その頃、私はこれからの進路に

いろいろ悩んでいた時期でもありました。

ただ、手仕事を生業としている方と

少しでいいから会ってみたい、お話をしてみたい、

という気持ちが強かったのだと思います。

 

若さゆえ?事前のアポもとらず

当日にいきなり電話をかけ、「いまから行きます」。

今思えばなんて礼儀知らずな小娘でしょうか。。

 

それでも、石川さんはあたたかく迎えてくれました。

創作しているアトリエとギャラリーを見せてくださいました。

 

GWの陶器市の後だったので数は少なかったものの、

静かな空間でゆっくり作品を眺めることができました。

「粉引」という技法でつくられた、

ぽってりとした少し厚みのある

白いうつわたちがとても印象的でした。

 

石川さんの人柄と作品にすっかり魅了された私たちは

お皿や一輪挿し、木の蓋がのったポットなどを買いあさり、笑

アトリエを後にしたのでした。

 

一輪挿しは結婚後も我が家に連れてきて、

玄関と飾り棚に置かせていただいています。

日常のなかでふと見ると、

あまり多くは語らないけれど、

優しい笑顔の石川さんと、

あのときの情景がフラッシュバックのように蘇ります。

そして、

無垢で純粋な、まっすぐな気持ちが

ふわっと通り過ぎる気がします。

 

私が陶芸やうつわが好きになったのは

きっとこの出会いがあったからだろう、と思うのです。

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旅とうつわ

旅は出会いだと思います。

 

祖父母も生きていた頃、

1年に1回は家族みんなで旅行をしていました。

 山陰から九州へと旅したとき、

陶器好きな母のリクエストで(たぶん)

萩、有田・伊万里の窯元を訪問しました。

私はまだ幼く、陶器のよさがわかっていなかったと思います。

父が、萩焼の湯飲みを購入しました。

 

たくさん飲む父にあった、ふつうよりかなり大きめ。

桜色と白色が混じった、品のいい色合い。

 

家でつかっているととても存在感があり、

その湯飲みで飲む父がとても羨ましく思えました。

父もすっかり気に入っている様子で、

それから何年も使い続けました。

ところが、なにかのはずみで割ってしまったらしく、

 もう戻らない姿になってしまいました。

父のものなのに、とても残念で残念でなりませんでした。

 

そして、

いつか似たような湯飲みがあったら父のために買おう、

と思いながら今に至ります。

いくら探しても、これ、というものがないのです。

あの萩焼の湯飲みが

生活に、感覚に、

あまりにフィットしすぎていたんだと思います。

 

大学の頃、

友達と京都に行きました。

伏見で日本酒にはまり、

その勢いもあってか、清水焼のお店に入った時に

自分のためにお猪口を購入しました。

たくさんあるなかで選んだのは

父の湯飲みを思い出させるような、

ほんのり桜色をしたお猪口でした。

初めてうつわを自分で購入した思い出の一品です。

 

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ブログはじめました。

食をめぐる空間が好きです。

うつわ。

グラス。

お箸。

ダイニングテーブル。

照明。

美味しい料理。

大好きな人たちと囲むひととき。

 

大学での専攻は建築でした。

コンクリートや鉄骨、ガラスでつくられた建築より

木造の古民家に心魅かれました。

そこには木のぬくもり、

日本の環境に適した設計、

建設に携わる方たちの

たくさんの工夫、仕事がありました。

人間の知恵と手仕事でつくられた古民家は

現代に生きる私たちにも"ほっこり"とした安心感と居心地のよさを

教えてくれました。

 

そして、

建築だけでなく、生活に関わる全ては工業化され、

私に安心感を与えてくれた手仕事は

日々継承することが困難になっていることを

知りました。

 

手仕事による うつわには

工業製品にはない、ぬくもりがあります。

古民家であじわった"ほっこり"が息づいている気がします。

 

うつわをはじめとする

日本の手仕事の魅力をこのブログを通じて伝えていけたら、と思い

ブログを始めることしました。

 

よろしくお願いします。

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